2026.10.02 / VOL. 40 / 全 666 記事

トリウィア

高解像度な本音。

ぼんやりした世論を、Webディレクターの解像度で鮮明に、かつ辛口に切り出す記録。

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退去時に高額請求されたアンタ。それ、払わなくていい分が混ざってるかもよ

賃貸物件の原状回復義務の範囲を、国土交通省のガイドラインに沿って整理し、入居時からできる備えと、請求を受けたときの確認手順を解説します。

暮らしの構造

退去の立ち会いで、いきなり見積書を渡される。クロス全面張り替え、ハウスクリーニング、畳の表替え。合計で敷金を大きく超える金額。その場でサインする前に、確認すべきことがある。

原状回復は「借りた時の状態に戻すこと」ではない

ここが最大の誤解だ。国土交通省が示している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復の考え方が整理されている。

ポイントは、通常の使用によって生じる損耗と経年変化は、借主の負担ではないという点だ。これらは家賃に含まれていると考えられている。

貸主(大家)の負担とされるもの(例)

  • 日照によるクロスや畳の変色
  • 家具の設置による床のへこみ
  • テレビ・冷蔵庫の裏の電気ヤケ(黒ずみ)
  • ポスターやカレンダーの跡
  • 画鋲・ピンの穴(下地ボードの張り替えが不要な程度のもの)
  • 設備の耐用年数による劣化

借主の負担とされるもの(例)

  • タバコのヤニ・においによる汚損
  • 飲み物をこぼして放置したことによるシミ・カビ
  • 結露を放置したことによるカビ・腐食
  • ペットによる傷やにおい
  • 釘・ネジによる下地ボードまで達する穴
  • 手入れを怠ったことによる汚れ(掃除をしていない風呂・換気扇の油汚れなど)

境界線は、「通常の使い方をしていたか」と「手入れを怠らなかったか」にある。

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経過年数の考え方

もう一つ重要なのが、これだ。仮に借主の責任で壁紙を汚した場合でも、全額を負担するとは限らない。

設備には耐用年数があり、時間の経過とともに価値が下がっていく。ガイドラインでは、経過年数を考慮して負担割合を決める考え方が示されている。

例えば、耐用年数を経過した壁紙であれば、借主の負担割合は大きく下がることになる。10年住んだ部屋のクロス張り替え代を全額請求されているなら、確認する価値がある。

ただし、施工にかかる手間の部分などは負担対象になりうるなど、扱いは単純ではない。

入居時からできる備え

退去時に揉めないための最大の対策は、入居時にある。

  1. 入居直後に、部屋中を写真・動画で記録する: 日付が残る形で。既存の傷、汚れ、設備の状態をすべて撮る
  2. 気づいた不具合を、書面で管理会社に伝える: 入居時のチェックシートがあれば、細かく記入して提出し、控えを保管する
  3. 契約書の特約を確認する: 「退去時のハウスクリーニング費用は借主負担」といった特約が付いている場合がある

3番目について補足すると、特約が常に無効というわけではない。ただし、内容が明確に記載され、借主がその内容を認識して合意していることなどが必要と考えられている。契約時に説明を受けたか、記憶を確認しておきたい。

請求を受けたときの手順

  1. その場で署名・押印しない: 「持ち帰って確認します」と伝える
  2. 明細を書面でもらう: 項目ごとの内訳と、単価・数量が分かるもの
  3. 各項目が、通常損耗か借主負担かを確認する
  4. 経過年数が考慮されているかを確認する
  5. 納得できない項目について、根拠を質問する

感情的にやり取りする必要はない。「この項目は、ガイドラインではどのような扱いになりますか」と、事実ベースで聞くのが有効だ。

相談先

当事者間で解決しない場合、次の窓口がある。

  • 消費生活センター(消費者ホットライン 188)
  • 各都道府県の宅地建物取引業に関する相談窓口
  • 金額によっては少額訴訟という選択肢もある

まとめ

  • 通常損耗と経年変化は、原則として借主の負担ではない
  • 境界は「通常の使い方」と「手入れを怠らなかったか」
  • 借主負担の場合も、経過年数が考慮される
  • 入居時の写真記録が、最大の備えになる
  • その場で署名せず、明細を書面でもらって確認する

※本記事は一般的な情報提供です。個別の事案については、契約内容によって扱いが異なります。判断に迷う場合は、消費生活センターや専門家にご相談ください。

参考・出典

※制度・統計・ガイドラインは改定されることがあります。実際の手続きや判断にあたっては、各機関の公式サイトで最新の内容をご確認ください。(リンク最終確認: 2026年9月1日)

書いた人

トリウィア編集部

ぼんやりした世論を、仕様書を読む解像度で切り出しています。Webディレクター兼エンジニア。