有給が取れない職場を「人が足りないから」で説明するな。その業務、アンタしか触れないようにしただけだよ
有給が取れない構造の中心は属人化です。年5日の取得義務の位置づけ、引き継げない業務が生まれる理由、休める状態に持っていくための具体的な手順を解説します。

「休みたいのは山々だけど、自分が抜けると回らない」。これを謙遜や責任感として語る人がいるが、組織から見れば単一障害点がそこにあるという報告だ。褒められる状態ではない。
まず、法律の側の前提
年次有給休暇について、働き方改革関連法の施行により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対しては、年5日を確実に取得させることが使用者の義務とされている。取得は本人の権利であると同時に、取らせるのは会社側の義務でもある、という構造だ。
つまり「忙しくて取らせられない」は、業務の都合として成立していても、義務の側の理由にはならない。ここを曖昧にしている職場は、単に管理ができていない。
「休めない」の中身を分解する
本人が休めないと言うとき、原因は大きく3つに分かれる。混ぜて議論すると解決しない。
- 業務が引き継げない — 手順が本人の頭の中にしかない
- 代わりの人がいない — 量的に足りない。これは採用や配分の問題
- 休むと気まずい — 制度はあるが、空気で運用されている
2つ目は経営判断が必要だが、1つ目と3つ目は現場で動かせる。そして実際に多いのは1つ目だ。
属人化は、善意から生まれる
誰かがサボった結果ではない。むしろ逆で、こういう順路をたどる。
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詳しい人に集まる
効率がいいので、その分野は自然にその人へ寄る
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説明より自分でやるほうが速くなる
教える時間が業務に入っていないので、合理的な選択として自分でやる
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手順が言語化されない
自分でやる限り困らないから、書き出す動機が発生しない
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抜けられなくなる
気づいた時点で、引き継ぎに何日もかかる状態になっている
だから対策も、意識ではなく時間の配分で打つ。教える時間、書く時間を業務として確保しない限り、この順路は必ず進む。
休める状態に持っていく手順
いきなり完璧な手順書は作れない。作ろうとすると挫折する。粒度を下げて始める。
- まず「自分が3日いないと止まるもの」だけ列挙する — 全業務の棚卸しはしない。止まるものだけでいい。たいてい3〜5個に収まる
- その手順を、雑でいいから書く — 清書しない。箇条書きと画面のスクリーンショットで十分
- 実際に1日休んで、詰まった箇所を追記する — 書いただけでは抜けが分からない。動かして初めてバグが出る
- アカウントと権限を確認する — 手順があっても、その人のIDでしか入れないなら引き継げない。ここが見落とされやすい
1日休む、を先にやるのがコツだ。完璧に備えてから休もうとすると、永遠に休まない。
管理する側がやること
取得状況を見て、少ない人に個別に声をかける。「取れるときに取って」では動かない。期間を指定して打診するほうが実際に取れる。あわせて、その人が抜けたときに誰が受けるのかを、休む前に決めておく。決めるのは本人ではなく管理する側の仕事だ。
休んだあとに崩れないための最後の一手
引き継いで休むところまでできても、戻ってきた初日に問題が集中して結局しんどい、という結末は多い。ここも設計で軽くできる。
- 復帰初日の午前は予定を入れない — 溜まった連絡の確認に時間がかかる。会議を入れると、確認が夜に押し出される
- 不在中の判断は「保留していい」と明示する — 代わりの人に全権を渡さない代わりに、止めていい範囲を先に決めておく。無理な判断を押し付けないほうが、次も引き受けてもらえる
- 不在中に起きたことを1か所に書いてもらう — 個別に聞き回ると半日かかる。置き場所を決めておくだけで済む
休んだ人が復帰後に消耗すると、「やっぱり休むと大変」という学習が組織に残る。そこまで含めて設計しないと、次の取得が遠のく。
まとめ
- 年10日以上付与される人には、年5日の取得が使用者の義務とされている
- 「休めない」を、引き継げない/人が足りない/気まずい、に分解する
- 属人化は善意と効率から生まれる。教える時間を業務に入れない限り進む
- 全業務ではなく「3日いないと止まるもの」だけ書き出す。雑でいい
- 先に1日休んで、詰まった箇所を追記する。備えてから休むのは無理
※制度の詳細や自社の運用については、厚生労働省の資料および就業規則でご確認ください。
参考・出典
※制度・統計・ガイドラインは改定されることがあります。実際の手続きや判断にあたっては、各機関の公式サイトで最新の内容をご確認ください。(リンク最終確認: 2026年9月30日)